土用といえば、丑の日とうなぎ。
これが一般的な認識ですが、実は土用とは、春夏秋冬、年に4回訪れる季節の移行期間です。
前の季節のエネルギーを脱ぎ捨てて次の季節に備える大事な期間なのです。
夏の土用のキーワードは「体のケア」「感謝と感動」「秋の先取り」。
なぜそれらが大事なのか、風水の基本である五行説やエネルギーの側面から解説し、夏の土用におすすめの食べ物や過ごし方をご紹介します。
また、「今年の夏の土用の期間、丑の日はいつか」「丑の日の意味」「うなぎの由来」「土いじりや引っ越しについて」「土用餅、土用干し」等々、土用についての素朴な疑問に答えるお話もたくさん盛り込みました。
これを読めば、土用についての基本的な知識は万全です。
暮らしに役立つ部分は積極的に取り入れて、秋からの運気アップを図りましょう。
取材・文
長谷川 恵子(ライター・編集者)。
企業勤務を経て、フリーライターとしてビジネス誌や企業、自治体の広報誌の取材・執筆に携わる。現在は書籍制作とWebライティングで多忙な日々。
監修:横浜中華街「盛華」
陣崎 マリア(風水師・九星気学鑑定士)
横浜中華街コンシェルジュ。運勢・運命・家相・方位鑑定を得意とする。手相でもプロの資格を持つ。
張 愛りん(風水師・九星気学鑑定士)
横浜中華街コンシェルジュ。サイキック能力を活かした運勢・運命鑑定を得意とし、 西洋占星術の資格も持つ。
土用とは
土用とは、季節の変わり目の期間で、暦の中に、二十四節気とは別に設けられた雑節のひとつです。
土用が訪れるのは1年に4回。立春、立夏、立秋、立冬の前に、それぞれ約18日間続きます。
この期間の特徴は何かというと、まず、物事がなかなか前に進まない傾向があります。仕事でも私生活でも、細かい修正が必要になってきたりします。
西洋占星術で言う水星逆行とも似ていますが、そちらはどちらかというとコミュニケーションや通信、交通などの面で、障害や停滞が起きがちです。
土用の影響は、タイミングという面で強く出ます。
なぜなら土用はエネルギーのシフトタイムなので、自分が今まとっているエネルギーを脱いでいくのですが、1回でスパッと全部脱ぐことはできません。約18日間かけて徐々に脱いでいきます。
それを誰もが一斉にやっているので、言ってみれば間合いが悪い、タイミングがぴたっと合わない、そういう現象が起きるのです。
今年の夏の土用の期間は?丑の日はいつ?
今年の夏の土用は、2023年7月20日(木)から8月7日(月)まで続きます。
世間で「うなぎを食べる日」として知られる夏の土用の丑の日は、7月30日(日)です。
土用の丑の日の意味
夏の土用の中で、毎年話題になるのが丑の日です。
そもそも丑の日にはどんな意味があって、なぜ注目されるようになったのでしょう。
丑は、方角では北東、五行では土の性質を表し、変化変容の意味を持っています。
そして変化の時期には、どうしても不安定さがついて回ります。
つまり、土用の丑の日は、季節の変わり目である土用の中でも、とくに不安定になりやすい日なのです。そこで、身を守るために精のつくものを食べる慣習が生まれたと考えられます。
丑の日に限らずおすすめの食べ物
丑の日にうなぎを食べる由来は?
夏の土用の丑の日にうなぎを食べる風習が生まれたのは江戸時代からで、平賀源内の発案といわれています。
文献から引用してみましょう。
ことに『夏土用と丑の日』と、平賀源内が「うしの日」と書いて「うなぎ」の姿にデザイン化してから、丑の日に『うなぎ』を食べることになったという。
(「伝えておきたい日本の伝統・季節の慣習」山蔭基央著・マネジメント社)
また、陰陽道との関連で、丑の日とうなぎに関するこんな話もあります。
ことわけても夏土用(羊月の丑の日)は、六沖日とて“凶日”とされるから「うなぎ」のように“土や穴”にもぐっている魚を食べることで、“災禍厄難”を除こうというのが陰陽道での考え方であり“呪術”である。
(同じく「伝えておきたい日本の伝統・季節の慣習」より引用)
現代では「うなぎを食べて精をつける」という部分だけがクローズアップされていますが、元々はそういう意味づけがあったのですね。
ほかに、「う」のつく食べ物を食べるとよいという風説もありますが、由来ははっきりしません。具体的に挙げられている食べ物は、梅干しや瓜類など、夏バテによさそうなものや旬のものが多いです。
うなぎの蒲焼一覧
土用餅とは
江戸時代頃から、土用の入りにあんころ餅を食べる風習が始まったといわれ、この時期に土用餅の名前で店頭に出している和菓子屋さんもあります。
お餅は身体に力を与え、小豆には魔除けの作用があるといわれていることから、暑さを乗り切るための食べ物として推奨されてきたのでしょう。
五行説でわかるおすすめの食べ物
目覚めの風水が夏の土用におすすめしたい食べ物は、大きく分けて5種類あります。
- 苦い、赤い食べ物
- 甘い、黄色い食べ物
- 味噌汁
- 自然塩の梅干
- 甘酒
これから1~5について説明していきますが、1と2は、五行説(森羅万象は木、火、土、金、水の5つの元素に分類され、バランスを取り合っているという思想)に基づいたおすすめの食べ物です。
「五行説の作用表」を参照しながら読んでいただくとわかりやすいです。
五行には、それぞれ対応する季節、色、味、臓器、感情などがあります。それらをふまえてその時期に適したものを食べることで、心身のバランスが整います。
また、夏の土用期間は、暑さに負けない体づくりのために、不足しがちなミネラルなどの栄養素をいつも以上にしっかり摂ることも大切です。
こうした食べ物を意識して食卓に乗せることで、すべての運の基本となる健康運がアップするのです。
1. 苦い、赤い食べ物
まず、夏と同じ火の性質を持つ臓器は心臓です。その働きをサポートしてくれるものを食べることが大切です。
色で言うと赤なので、夏はトマトやニンジン、クコの実などの赤い食べ物がよいとされています。それと、前の季節の食べ物。パセリ、春菊、よもぎ、ウコンなど苦みのあるもの。ニラやニンニクもおすすめです。
後者のパセリや春菊などは春の野菜ですが、なぜこれを夏に食べるのがよいかというと、春は五行で言うと木の性質であり、夏の火の性質を助けるからです。つまり、五行説の「相生」の関係を利用するわけです。
実際に、苦みのある春野菜は血液中の老廃物を排出させてくれて、暑さで運動不足になりがちな体の巡りをサポートしてくれます。
2.甘い、黄色い食べ物
土用の五行と同じ土の性質を持つ臓器は脾臓です。なので、この時期は脾臓をいたわることも大切です。
食べ物では甘いもの、と言っても砂糖の甘味ではなく、とうもろこし、かぼちゃ、玉ねぎなどの熱を加えると甘くなる、黄色い食べ物が脾臓の薬になります。
3.味噌汁
日々の基礎となる食事は、玄米まではいかなくても、ミネラル分の残った五分づきぐらいのお米に、自然塩を使った味噌汁を朝晩飲む、というのが理想です。
土用の頃は体調を崩しやすいので、とくにこうした食事を心がけるとよいのです。
4.自然塩で漬けた梅干し
自然塩で漬けた梅干しは、ミネラルたっぷりで夏バテに効きます。同じく自然塩で作った醤油を使うのも効果的です。
5.甘酒
米麹を使って作る甘酒は、俳句の夏の季語にもなっています。本来は夏の飲み物なのです。
甘酒は天然の点滴といわれているくらい滋養に富み、これも夏バテを防いでくれます。甘いものを食べたくなったら、とりあえず甘酒を飲みましょう。
土用期間にしてはいけないことって?
土いじりは本当にダメなのか
土用の期間中は、俗に、土いじりや草むしりなどをしてはいけないと言われています。それにはどういう理由があるのでしょうか?
ちなみに、土用期間中には間日(まび)という日が何日か設けられています。その日は土を司る神様である土公神(どくじん・どこうじん/広辞苑第五版より)が留守で、土用の作用がないので土に触ってもかまわないといわれているのです。
でも、それも人が生活上の都合で決めたものなので、ほとんど信憑性がありません。
なぜ間日を設定したかというと、あまり長い間土いじりを避けると、建設業の人など仕事に支障をきたす人が大勢いるからです。
結論として、土用期間中の土いじりはあまり気にしなくてよいようです。
神社仏閣の砂や水はつねにエネルギーをまとっているので、パワフルです。土用にいただいたお水を飲んだりしても、もちろんさしつかえありません。
でも、その効果が弱まってしまう期間ではあるので、お砂取りやお水取りで開運するという目的は果たせないというわけですね。
引っ越しや開業は避けるべき?
土用に引っ越しや開業などは避けるべしという言い伝えもありますが、これも昔の名残りであり、ダメだと言い切れる根拠は見当たりません。
引っ越しやお店の開店などは、誰でもなるべくいい日を選びたいものですが、土用という期間自体、いろいろなものが不安定です。
そのタイミングで新しいことを始めても、先々まで不安定要素を引きずってしまうと考えられたのでしょう。
引っ越しで一番大事なのは、どういう人がどういうタイミングで動くかということなので、引っ越しに良い時期や悪い時期というのも、簡単には決められないのです。
辻(四つ角)でボーッとしてはいけない?
夏の土用の頃は、陰陽道では「辻(四つ角)に気をつけろ」といわれています。
そこはいろいろな「黄泉の国の者たち」が出入りするので、人間は隙を与えないで身を守れという言い伝えがあるのです。
信じるか信じないかはあなた次第。心配な人、敏感な人はお守り的なものを身につけるとよいでしょう。
「そんなの信じない」という人も、ぼんやり歩きスマホなどしていると危ないのは確かですから、気を引き締めたほうがよいですね。
夏土用の過ごし方
土用の入りや土用明けの過ごし方は?
土用は季節の移行期間であり、それを意識することは大切ですが、とくに土用の入りにこれをするとか、土用明けにこれをするとかは、気にしなくて大丈夫です。
土用の期間中は自分と向き合って、自分の中に眠っているものを出す時期として、可能であれば、思いついたことや、「次の季節をどういうふうに過ごしたいか」ということを書いてみるとよいでしょう。
土用干しとは
土用干しとは、古くから夏の土用に行われる年中行事のひとつです。
一口に土用干しと言っても、次の3通りの内容があります。
- カビや虫などの害を防ぐため、衣服や書籍などを風に当てて陰干しすること。「虫干し」ともいう。
- 梅雨の時期に塩漬けした青梅を取り出して、三日三晩干す「梅の土用干し」のこと。
- 稲作で、丈夫な根を育てるために夏土用の頃に1週間ほど水田の水を抜くこと。
この中で、どんな人にもできるのは、衣類や本の土用干しですね。梅雨の間にたまった湿気をとばして、さっぱりした気分でこれからの猛暑を乗り切りたいものです。
夏の土用に心がけたいこと
だるかったりお腹の調子が悪かったり、エネルギーの変化は体の不調で出ることが多々あります。
土用期間は体のケアに気を配るべき時でもあるのです。
とくに夏の土用に心がけたい体のケアや、おすすめの行動を挙げてみましょう。
1.食べすぎない
土用は食べすぎ注意です。腹八分目でも多いくらいで、腹六分目ぐらいに留められればベストです。
食べ過ぎはいけないし、でも必要な栄養素は取らないと夏バテしてしまうので、バランスを考えて食べることが必要ですね。
2.体を冷やさない
最近は、季節を問わず冷たいものを飲む人が多く、カフェなどでも氷の入った飲み物を飲んでいますよね。そうすると、どうしても水分が体にたまります。
そういう生活をしていて土用の頃になると、体は余分な水を排出しようとします。要はデトックスです。
そのために、お腹が少々ゆるくなったり、風邪で熱を出したり、そういう体調不良が起きやすいのです。
夏の食べ物にはナスもありますが、たくさん食べると体が冷えてしまうので気をつけましょう。ショウガと一緒に食べるなどして、熱を逃がさないようにする工夫が必要です。
また、日本の夏はとても湿気が多く、室内ではエアコンで冷えるので、とくに女性は足がむくみやすくなります。
3.深呼吸する
暑いと呼吸が浅めになるので、意識して、自律神経が乱れないように深呼吸を心がけましょう。
土用の期間はとくに、ちゃんと息をお腹に入れてふーっと吐くように意識しましょう。
4.適度に喜び、適度に体を動かす
土用は次の季節の準備をする時期です。夏の土用なら次は秋なので、秋の準備をしていかないといけません。
私たちの体は、秋は肺、大腸というエリアをたくさん使います。
その前に、夏は心臓と小腸のエリアをたくさん使うので、夏の土用の間に、心臓と小腸のエリアを18日間かけて癒し、次の季節に備えるのです。
夏は血液循環と関係が深く、心臓の働きが活発になったり、感情という部分では喜びと深く関わります。でも、それも度を過ぎるとよくないようです。
心臓を中心としたエリアは、熱も含めたエネルギーを循環させてくれている所でもあるので、そこを使い過ぎると手足の冷えやのぼせ、立ちくらみを起こしやすいのです。
5.「時」を先取りする
土用は変わり目なので、意識すれば、そのタイミングを利用してうまく「時」に乗ることもできます。
たとえば仕事にしても、こんなふうにできると理想的です。
「土用に入る1週間ぐらい前からある程度プランニングの土台を作り、土用の間にパズルを組み立てていき、調整をかけながらアレンジして、立秋に発表する」
6.感動と感謝をする
すでにお伝えしたように、夏の土用の時期は心臓のケアがテーマですが、感情では喜びに焦点を当てる時期です。なので、感動と感謝を心がけてみましょう。
小さなことにも感謝するようにしている、みなさんの中にも、そういう人は少なくないと思います。感動についてはどうでしょうか?こちらも、意識して探せばあちこちで見つかるものです。
感動する映画を見たり、本を読んだりすることが、とくに夏は大事です。(興奮は心臓に良くないので、「ときめき」や「喜び」を感じるものを選びましょう。)
さらに言うと、土用の時期はセンタリングとグラウンディングの強化月間でもあります。
センタリングとは、自分の内側に意識を戻して中心軸をしっかりさせること、ボディ、マインド、スピリットのバランスを取ること。グラウンディングとは、どっしりと地に足を着けることです。
土用は変化の時期なので、流れに巻き込まれても自分を見失わないように、とくにこれらをしっかりと行うことが大切です。
秋、冬、春の土用の過ごし方
年に4回やってくる土用は、どれも前の季節のエネルギーを脱ぎ捨てるタイミングです。
季節によって、それぞれの五行と対応する臓器が違うので、そこを重点的にケアすることが大切です。
四季の土用について、ここではごく簡単にふれておきます。
すでに書いたように、夏は適切な食べ物や運動などを心がけて、心臓や小腸を癒すことで、秋の臓器である肺と大腸が動きやすくなるようにします。次の季節に仕事を持ち越さないように、引継ぎをするわけです。
10月に来る秋の土用には、肺や大腸に良い白いもの、大根や玉ねぎ、ネギ、カブなどを食べて養生します。
秋は、夏に体内にため込んでしまった水分を排出することが大事なので、それを促してくれる葛湯や、切干大根や干しシイタケや豆などの乾物を取ります。小豆はとくに女性におすすめです。
冬の土用には、腎臓をいたわります。寒くて風邪をひきやすいので、首、手首、足首を冷やさないことが大事です。
首の後ろのツボからは、風邪もそうですが、いろんなものが入るので守ったほうがいいです。ちょうど頸椎の7番目ぐらいの位置は、とくに冷やさないように気をつけましょう。
春の土用は、土用の中でも一番大事です。春の臓器は肝臓です。そこが弱るとデトックスできなくなってしまうので、しっかりケアすることが必要です。
まとめ
Summary
- 土用とは年4回の季節の変わり目の期間で、雑節のひとつ
- 気が不安定な時期なので、いろいろな面でタイミングがずれることが多い
- 2023年の夏の土用は7月20日(木)から8月7日(月)まで
- 夏の土用の丑の日は、7月30日(日)
- うなぎを食べるようになったのは江戸時代からで、平賀源内の発案
- 陰陽道では、夏土用の丑の日は凶なので穴にもぐる魚を食べると厄除けになるとされた
- 土用餅とは、江戸時代から土用の入りに食べられてきたあんころ餅のこと
- 夏の土用のおすすめの食べ物は「苦い、赤い食べ物」「甘い、黄色い食べ物」「味噌汁」「甘酒」「自然塩の梅干し」
- 土いじりや引っ越し、開業は、現代では必ずしもダメではない
- 土用期間のお砂取りやお水取りは効果が薄いのでやめておく
- 土用の頃に四つ角でボーッとすると危険という説がある
- 土用の期間中は自分と向き合い、思うことを書き出してみる
- 衣類や本の土用干しで湿気をとばしてサッパリしよう
- 夏の土用に心がけたい体のケアは「食べすぎない、身体を冷やさない、深呼吸する、適度に体を動かす」
- 季節を先取りした行動、感動と感謝を意識して、自分を保ちながら時の波に乗ろう
- 秋の土用、冬の土用、春の土用も五行と対応する臓器をいたわり、次の季節に備えよう