「鬼門の玄関は大凶」
「鬼門にトイレがあるのは最悪の間取り」
そんな類の話を、あなたも聞いたことがあるのでは?
どこかですり込まれて、ずっと「鬼門は怖い方角。避けないとダメ」と思い込んでいる人も少なくないですよね。
でも、それは絶対的に本当なのでしょうか?
ここでは、ずっと嫌われてきた鬼門という場所に焦点を当てます。
北東(鬼門)や南西(裏鬼門)という方角の家相的な意味、風水的な意味とその根拠。
マイナスの影響を受けないための対策。
そして、方位を味方につけて、良いエネルギーを受け取るおすすめの方法まで。
プロの風水師ならではの、よそでは聞けないお話をご紹介します!
取材・文
長谷川 恵子(ライター・編集者)。
企業勤務を経て、フリーライターとしてビジネス誌や企業、自治体の広報誌の取材・執筆に携わる。現在は書籍制作とWebライティングで多忙な日々。
監修:横浜中華街「盛華」
陣崎 マリア(風水師・九星気学鑑定士)
横浜中華街コンシェルジュ。運勢・運命・家相・方位鑑定を得意とする。手相でもプロの資格を持つ。
張 愛りん(風水師・九星気学鑑定士)
横浜中華街コンシェルジュ。サイキック能力を活かした運勢・運命鑑定を得意とし、 西洋占星術の資格も持つ。
鬼門の意味
鬼門とは、平安時代に陰陽道(陰陽思想)が日本に入ってきてから広まった概念です。
鬼(邪気)とは、災いをもたらす邪悪なものの象徴。
北東はその鬼が侵入してくる方角とされ、鬼門として忌み嫌われるようになりました。
科学が未発達だった時代の人々には、病気なども「目に見えない悪いもののしわざ」です。
そういう世の中では、鬼という存在もリアルに感じられていたのでしょう。
鬼門に関するエピソードはたくさんありますが、たとえば、徳川家康が江戸城の鬼門の方角に神社仏閣を置いたのは有名です。
「鬼門は避けるべき方角」という考え方は、家相の世界では、現在までずっと受け継がれています。
鬼門と裏鬼門
北東が鬼門と呼ばれるのに対して、反対側に位置する南西は裏鬼門と呼ばれます。
鬼門と同じく、やはり鬼が出入りする不吉な方角として避けられてきました。
家相鑑定では、たとえば鬼門や裏鬼門にキッチンや水回り(トイレやお風呂)のある家は、どんな人にとっても悪いとされています。
そうなった背景には、昔の住環境もありました。
北東も南西も、じめじめしがちな場所です。そういう場所で食べ物を扱ったり、ただでさえ汚れがちな水回りを置くことは、衛生面からも避けるべきだったでしょう。
何しろ、冷蔵庫も水洗トイレも、各種洗剤や除菌スプレーもなかったのですから。
でも、今は住宅事情がまったく違います。私たちは、昔とは比較にならないほど清潔な環境で暮らしています。
また、賃貸でも分譲でも、住宅の間取りはあらかじめ決まっていることが多いですね。注文住宅だとしてもいろいろな制限があります。
玄関、キッチン、水回り、寝室、リビング……。何もかもが理想的な間取りの家に住むのは、至難のワザです。
そんな現代だからこそ、鬼門に対しても、従来とは少し違ったとらえ方をしてみてもいいのではないでしょうか。
風水にはもともと鬼門がない
家相と違って、伝統的な風水の世界にはもともと鬼門というものが存在しません。
建物の形や間取りから万人に共通の吉凶を占う家相とは、スタンスが違うからです。
風水ももちろん建物の形や間取りは観ますが、ほかにもいろいろな要素を入れて判断します。
方角に関しては、「そこに住む人にとってその方角が吉か凶か」が主になります。
そうやって住まいの気(エネルギー)の状態を判断し、より良くなるように調整して、住む人を開運に導くのです。
そういうわけで、風水は、家相で凶といわれる鬼門も、絶対的に悪い方角とは考えません。
ただ、それらの方角は、風水でも基本的に気が安定しない方角といわれているので、取り扱いが難しいという解釈になります。
なぜなら、北東も南西も、木、火、土、金、水の五行で言うと土の性質が強いからです。
土は雨が降れば水がしみ込んで柔らかくなり、日が照れば固まります。形を変えるのも簡単です。プラスに解釈すれば柔軟ですが、その一方で変容しやすく不安定ともいえます。
そのことから、家相で鬼門、裏鬼門に当たる方角は、運気を下げないために注意したほうがよい方角という位置づけになったようです。
気が安定しないとその方角で生活する人もそのエネルギーを受けてしまうので、本来なら何もしない場所、たとえば物置、納戸などをつくるのがふさわしいとされています。
でも、たとえ物置でも、「整理整頓して必要ないものは置かない」というのが基本の取り扱い方法になります。
鬼門の調べ方
風水では「磁北」を基準に方角を測る
風水を生活に取り入れるなら、鬼門を気にする人も気にしない人も、鬼門も含めた「方位を調べる方法」を知っておくことは必須です。
やや専門的な話になりますが、できるだけシンプルに説明してみましょう。
風水で建物の中の方位を観るときは、方角を8つに分けるのが基本です。中心から東西南北を割り出し、さらに45度ずつに区切って8方位に分けます。
方位を調べるには、まず北の方角を測定しますが、そのとき、ほとんどの流派の風水では偏角が使われます。
偏角とは、地図上の真北と、方位磁石(コンパス)が示す北、つまり磁北との間に生じる角度の差です。
地球が持っている磁気(地磁気)のために、方位磁石が指す北は、地図上の真北の方角よりもちょっとだけ西にずれているのです。
実は、この偏角は、同じ日本国内でも居住地によって少しずつ違っています。国土地理院のデータで調べると、たとえば神奈川県横浜市中区なら、7.20度です。でも北海道では8度~9度台、九州南部や沖縄方面では6度台です。
このような手順で割り出した「北東」と「南西」が、その家の鬼門と裏鬼門になるわけです。
風水盤を使うならグレードの低いものはNG
注意点は、たいていの間取り図には、地図上の北、真北が使われているということです。
コンパスを使って自分で方位を確認する場合は、家の中の「このへんが中心」という位置に立ち、胸のあたりに方位磁石を持って、北の方角を確認して測りましょう。
ちょっと面倒なのは、鉄筋コンクリートの家やマンションだと、方位磁石では正確に割り出せないこと。磁石が鉄筋に反応して、北の方角がずれてしまうからです。(木造なら影響はありません。)
磁北が基準になっているか。建物が鉄筋かどうか。正確性を求めると、素人にはけっこうハードルが高いといえます。
また、使う道具も重要です。
100円ショップの方位磁石などは狂っていることが多いので、おすすめできません。
登山で使われるものなら小さいけれど正確なので、できればそういうものを使いましょう。
もっと本格的に方位を測りたい人には、風水盤という道具があります。
風水盤にもかなりのグレードの違いがあります。手軽に手に入るものでも、方位が測れないことはありません。
1度間違えても結果が変わる、かもしれない!?
だからプロの風水師は、道具もきちんとしたものを使い、細心の注意を払って方位を測っているわけですね。
鬼門ライン(鬼門線)とは
風水的な対策はやっぱり掃除と整理整頓
北東と南西を結ぶ線は、鬼門ラインとか鬼門線と呼ばれているようです。
家相鑑定には、そこを特別なゾーンと位置づける考え方もあるようです。鬼門・裏鬼門の場合と同じく、そこに玄関や水回りなどがあるといけないといわれます。
でも、すでに書いたように、風水では鬼門を忌み嫌ったり、危険なものというとらえ方をしません。鬼門ラインに関しても同じです。
ただ、北東も南西も気が落ち着かない方角ではあるので、その方角にかかる場所は、とくにしっかり整理整頓をする必要があります。
鬼門が欠けた建物は不吉?
家相における欠けとは、建物のへこんだ部分のこと。ベランダがある場合なども欠けているとみなされます。
鬼門は忌み嫌われてきたため、そこが欠けているほうがよいという解釈もあり、わざと鬼門の方角に欠けをつくっている家もあるくらいです。
でも、本来は、鬼門は欠けていないほうがよいといわれています。
家相では、北東には家庭運とか家族とかの意味合いがあるので、北東の鬼門が欠けていると家族の仲がうまくいかなかったり、家庭運に恵まれなくなるといわれます。
南西は一家の母親に影響を与える方角なので、裏鬼門が欠けていると、母親が家の中に落ち着くことができない状態になるといわれます。また、近隣との関係を表す方角でもあるので、そこに影響が出る可能性もあります。
以上はあくまでも家相的な話でした。
風水的な見方では、その方位に欠けがあると、気薄(きうす)、つまり気の密度が低い状態になります。もともと気の不安定な北東や南西だと、よけいに不安定要素が出てきてしまいます。
それを改善するには、たとえばそこがベランダなら、観葉植物を置いておいてエネルギーが集まるようにするなどの方法があります。
鬼門と風水の不思議な関係
風水では鬼門より「方角との相性」を重視
重要なポイントは、鬼門や鬼門ラインを「絶対に凶」と言わないからといって、風水が方角(方位)をゆるくとらえているわけではない、ということです。
逆に、風水のプロは非常に緻密な鑑定を行っています。
方角についても、エネルギーという観点から、「そこに住む人とその方角の相性はどうか」を、個別に観ます。
それぞれの方位の象意も、家相の場合は「東は太陽が上がる方位、明るい、発展的」といった位置づけが決まっています。
でも風水の場合は、その建物がいつ建てられたかによって、東の方角にあるエネルギーの見方が変わってきます。
20年周期で見ていくのですが、どのタイミングでその家が建てられたかによって、エネルギーが違うのです。
そんなふうに、いくつもの要素をからめて考えるので、風水では「これはみんなにとって良い、これは悪い」と一言でまとめるような、シンプルな解説にはならないわけです。
自分と方角との相性がわかる「本命卦」
「自分の住まいのどこが良いか悪いか、一般人には判断できないの?」と思った人、大丈夫です。
プロでなくても、ある程度は自分で調べられます。
自分にとっての方角の吉凶を調べるには、風水では「本命卦(ほんめいか)」というものを使います。
本命卦とは生まれ年から割り出すもので、その人が生まれ持った性質(エネルギー)を表します。
本命卦の根底には陰陽と八卦の考え方があります。
八卦は森羅万象を「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤(けん・だ・り・しん・そん・かん・ごん・こん)」の8つに分類しています。人の本命卦もこの8つのどれかになります。五行や九星、風水の方位も、それぞれ八卦と対応しています。
本命卦がわかれば、基本的にどの方角が自分にとって吉か凶かがわかります。ここでは、その人の九星でわかる本命卦の早見表と、最大吉方位の情報をご紹介します。
それでも、起きているときは自分が意識しているからまだいいけれど、寝ているときは本当に無防備なので、悪い方角を向かないほうがいいですね。
本命卦を活用するときの注意点は、良いことばかり追求しすぎないことです。
布団に入って隣を見ると、そこに相手の足が!? 何もかも大吉で固めようとして変な暮らし方になってしまったら、本末転倒ですね。
一番大切なのは悪いエネルギーを避けることです。良いエネルギーを得ようとするより、そちらのほうが大切なのです。
鬼門を避けず、風水優先で財を得た話
くりかえしお伝えしていますが、風水では、鬼門は必ずしも悪い方角とはかぎらないのです。逆に、人によっては大吉の方角になることもあります。
もちろん気の安定性という面から見ると、鬼門は基本的にキレイにすべき方角なのは確かです。
そういう部分に気をつけていれば、その方角と相性の良い人にとっては、予想以上の運気アップをもたらすこともあるようです。
チャレンジすれば、そのプロセスで落ち込む時期もあるかもしれません。でも、必ずその先には収穫があります。
あえてチャレンジして、「収穫を取って成長していく」「自分の新たな一面を開く」という認識を持って行動すれば、いろいろあってもすべて自分の肥やしにすることができると思います。
また、これも家相にはあまりない考え方ですが、風水はそれぞれの方角を巡る星(九星)によって、その方角が大きな影響を受けると考えます。
そうすると、自分が方角から受けるエネルギーも星の巡りに応じて変化していくので、方角との相性も常に一定ではないということです。
だからこそ風水は変化するエネルギーを敏感にキャッチして、柔軟に対処する開運法として発達してきたわけですね。
まとめ
Summary
- 鬼門とは陰陽道の考え方で、鬼(邪気)が出入りする方角を意味する
- 家相では北東(鬼門)、南西(裏鬼門)を大変不吉な方角と位置づけている
- 伝統的な風水にはもともと鬼門という概念がない
- 鬼門を調べるには、風水では方位磁石の北を基準に方位を8分割する
- 方位を調べる道具は登山用コンパスか質の良い風水盤がおすすめ
- 鬼門ライン(鬼門線)とは、北東の中心と南西の中心を結んだ線
- 風水的な鬼門への対処は掃除と整理整頓
- 風水では鬼門より「本人と方角の相性」が重要
- 「本命卦」を使うと自分と各方角の相性がわかる
- 鬼門が欠けた建物は良いとはいえないが、対処法もある
- 鬼門を避けず、風水を優先して財を得た実例がある
家相は鬼門をすごく重視するけれど、伝統的な風水の世界には、もともと鬼門がない。これはちょっとビックリです。でも、風水師の多くは家相と風水を組み合わせて鑑定するので、鬼門という場所の性質をふまえつつ、柔軟な提案ができるわけですね。「本命卦」も耳慣れない言葉ですが、知っておくと、悪いエネルギーから身を守れるので安心です。